観光地レポート |
漓江の流れと倶に栄えた古鎮「大虚」 |
更新日:2019年05月24日 |
大虚古鎮は桂林市内より約20キロの距離にあり、気軽に見物できる場所です。しかし、現在の田舎街「大虚」からは想像もできない繁栄の歴史を持っています。 |
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明の時代の姿を止めている古鎮「大虚」は、華やかな過去と忘れられた歴史を持つ田舎街です。忘れられた故に、歴史的景観が遺され、近年、再び脚光を浴びています。
撮影日:2013年4月28日
撮影場所:広西省桂林市 霊川県にある大虚古鎮
「大虚」は歴史的建物や通りが、今も遺っている趣きのある田舎「街」です。時代を遡れば、現在では想像もできないような重要な土地でした。
街の裏手には、豊かな水量を保ちゆったりと流れる「漓江」が望めます。遠くに山々が連なり、川面には水上生活者の家船が静かに漂い、まるで一幅の絵を見るようです。
この地には、古く紀元前200年頃には人々が住み始めたそうです。現在の街の姿になった明の時代(1367年~1413年頃)、広西地方で四大名鎮の一つに数えられた程の存在でした。ここは、昔も今も都から遠く離れた辺境の地です。徒歩や馬車の交通手段しかなかった時代、山が多く地形が険しいこの広西の地における陸上交通は、とても困難を極めるものでした。その時代の主要交通路は必然的に水上交通へ求められ、人や物資の大動脈として「漓江」を抱え込んだ「大虚」は水運の要として発展しました。
かつては、川面を埋め尽くす程の家船が、人や物を満載して忙しく上り下りしていたのが、今ではほんの数隻の家船が、消えゆく運命を待つように静かに浮んでいます。
人や物資の集散地、商業の中心地としての役割が増すにつれ、旅館、食堂、米、酒店など多くの商店が軒を連ねて賑わい、通りの総延長は2、3キロメートルにも及ぶ一大商店街を形成するようになりました。今、私達が目のあたりにしているこの「田舎街」が、こんなにも栄えていた姿を想像できるでしょうか?
時代を経るにつれ、道路網の整備と共に人や物資の動きは、鉄道や車便へと移ってゆき、忘れさられた街「大虚」になってゆきました。改革開放後、桂林を訪れる外国の観光客の増加に伴い、近年この街も息を吹き返しました。
街の入口では、お婆さんが鶉や鶏の塩蛋「シェンタン(塩漬卵)」を売っています。シェンタンはここの名物です。人々はシェンタンを買い歩きながら食べます。唐辛子とニンニクも売っています。それも買い求め細く刻み、瓶に入れ持ち帰り、家で麺類や惣菜の薬味として用います。辛い物好きには風味が増しこたえられないそうです。
通りはとても狭く、少々曲りくねった石畳の一本道が2、3キロ続いています。両側は、通りに被さるように家並がびっしりと建ち並んでいます。その中を、あたかも時代劇のセットをゆくような気分で散策できます。
建物は伝統的な木造二階建家屋で、一階は全て店鋪に、二階が住まいに使われています。現在、殆どの店が「お土産屋」さんで占められています。明の風情を残した家々の門口に、鏡と鋏が掛けてあります。邪鬼を払い、悪霊の類いの侵入を予ぐ意味があるそうです。
骨董品、山水画、竹細工、いぐさで編んだ茣蓙(ゴザ)、草編みの帽子、漢方薬など色々なお店があり、漢方薬の店には蠍(サソリ)・百足(ムカデ)・コブラなども売っています。欧米の観光客は、この店先に並んだ大きなガラス瓶に入った蛇の薬用酒が、特に珍しく、よくここで写真を撮っています。
この通りには、昔ながらの製法でお酒を手作りしている小規模な造酒屋も数軒残っています。通りに面した表に、酒の入った大きな甕を並べ小売りしています。奥では、米を蒸し、醸し、更に蒸留してできた酒を甕に入れ、それを地下の土に埋けて保存します。短くは1個月、普通は1年間寝かせます。高級なものは数年間寝かせた後に、山の洞窟へ移し、更に寝かせ、円やかな薫り高いお酒へ仕上げます。
この地方には、沖縄と同じ風習が伝わっており、子供が延生すると、親はお酒を仕込んだ甕を我が家の地下に埋け、その子が成人して結婚する際に取り出し、祝いの席で皆に振る舞い、新郎新婦の門出を祝います。
ここの家々殆どで、仏様・福神様・観音様をお祭りし、お菓子・果物を供え線香をあげます。又、鼠は財神とされ、財室の一杯詰まった大きな袋を担いだ銅製の鼠の置物をまるで大黒様のように奉っています。
街中に、万寿橋という石造りの古い橋が遺っています。清の時代(1899年)、洪水により崩壊しました。その後、村人がお金を持ち寄り再建しました。
その傍らに、当時寄進した人々の名を刻んだ石碑が、今も建っています。
橋の下では、洗濯したり、野菜などを洗ったりしている風景が見られます。
少しのゆとりと優しい眼差しで辺りを眺めると、大勢の観光客が通り過ぎる通りの傍らで、昔ながらの変わらぬ暮しの時が流れている…………と
気づかれるかもしれません。
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