馬勒別荘 - 基本情報|中国旅行のチャイナエイト
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観光地レポート プリント
馬勒別荘
更新日:2015年06月08日

 馬勒別荘は陝西南路30号にあります。現在マーラー別荘は中国国内唯一の一類近代保護建造物をリニューアルしたホテルであり、上海初のブティックホテルとして営業している。このホテルはバトラー・サービスを提供しており、まるで自宅にいるかのように心からくつろぐことが出来る。

 陝西南路と延安中路の交差点近くに広がる風景。微妙に色合いの違う赤レンガをモザイク上に嵌め込み、されに一段ごとに黄・青・赤のカラフルなレンガで装飾した大屋敷。屋敷を囲む塀には黄緑色の中国ガラスを原料にした瑠璃瓦がアクセントになっていて、まるで色鮮やかなクレヨン画のようだ。この中にいると子供の頃に何度も読んだアンデルセン童話の世界が脳裏に浮かぶのは、この小さなお城がマーラーという姓の、小さい女の子の夢を形にしたからだろう。
【歴史】
このお屋敷にまつわる話自体が童話のようだ。ある一人の少女が船長をしている父親に、夢の中で自分のお城に住んでいたという話をし、そのお城の絵も書いて見せた。父親はその絵を見てとてもうれしくなり、娘の書いた落書きのような絵を青写真に、一流の建築家に設計・施工を依頼してお城を完成させると約束する。それから10年が経ち、ついに娘の夢に出てきたお城が完成する。彼はそこに自分の航海ビジネスへの熱情も吹き込み、お城の中を豪華客船のように飾り立てた。更に彼は庭園の中に一頭の馬の青銅像を建てた。これは競馬好きの彼がまだ若かりし頃に連戦連勝し、大儲けさせてくれた馬に対して感謝の念を込めて彫像したという。
このお城の落成は1936年。父はついにかっての約束を果たし、愛娘の夢を現実にしたのだ。既に少女は美しい娘へと成長していたが。
この父親こそがイギリス国籍のユダヤ大人富豪、エリック・マーラー船長であり、小さなお城は陝西南路30号のマーラー・ヴィラだ。
1941年に太平洋戦争が勃発し、上海に居住する外国人たちは戦火を逃れて母国へ戻り始め、マーラー一家もやむなくヴィラを手放した。1949年以後、ヴィラは共産党青年団上海市委員会のオフィスとして使用されるようになった。時を経て新世紀に入り、2002年に衡山グループがヴィラの主人になり、新たないびきを吹き込んだ。
 
【建物】
文献や資料にはマーラー。ヴィラは北欧風の建造物と紹介されているのをよく目にするがどこから見ても中国風の鳥居形の門の存在にはどの様式に属すのかと頭を悩ませることだろう。
例えばこの門、2本のスマートな柱のようだが、中国風の鳥居型の門にも見える。塀と同じレンガの四角柱の上には緑の丸い玉が鎮座し、緑の瑠璃瓦と共鳴している。
瑠璃瓦の下には中国紅「斗拱」。右側の北入り口には非常に複雑な模様が彫刻された天井がある。上部の先頭は煌く金色で、突出した窓の上にも全てとんがり屋根がついている。このトンガリ屋根の塔は北欧建築の特徴で、寒風の進入を防ぎ、積雪量を減少させる利点があるとか。尖塔は東北と西南の角にひとつずつあり、大きい方のとんがり屋根には窓が縦名段ずつ開いている。
部屋数は大小あわせて106間もある。窓は全て逆U字型で色ガラスが嵌め込まれ、差し込む光を演出する。弓なりにカーブしている階段の両端には中国式の石の獅子像が鎮座している。玄関のドアの上には小さな屋根がつけられており、その形も色調も東南アジア風だ。中央で突出している個所はイギリスヴィクトリア王朝時代のハーフティンバー様式である。インテリアとして室内に飾られている装飾品は青花の陶磁器や古びたコイン、ローマ支柱、厨子など中国風のもの、欧米風のもの多種多彩だ。
こうしたごった煮的なお屋敷の最大の特徴は、やはり随所に見られるマーラーの航海への愛だろう。屋敷の中は船倉と同じようにドアだらけで、階段は全て曲がりくねっており、途中で東西翼に別れた階段の一翼は「へさき」に、もう一翼は「船尾」に通じており、不慣れな人ならまず間違いなく迷ってしまうはずだ。階段は上に行けば行くほど狭くなり、回廊や通路には化粧板が施され、所々に木彫りの装飾板も貼られている。それらは全て船倉や錨、海草、波、水平線に上がる日の出、灯台、船上での作業など、船や海に関連性がある模様だ。
床板も、細いものでは数ミリメートル幅しかない板を巧くはめ合わせて海草やワカメの模様を形作っており、内装というよりも工芸品のようだ。さらに鏡台などの家具は全て壁に固定されていて、大海原での生活を彷徨とさせる。
「チャンピオン馬」の青銅像の横を通り、小川に沿って庭園を歩けば、ぽつんぽつんとおかれた石鼓や石燈竜が目に入る。この燈竜の形が典型的な日本式なのが面白い。
この遊び、心満載の建物は建築の常識を全く無視している。ただただ子供の想像力だけで、全然違う物をくっつけ合ったからこそ、子のナチュラルな美しさになったのだろう。案外芸術とはそういうものなのかもしれない。
【周辺紹介】
現在マーラー別荘は中国国内唯一の一類近代保護建造物をリニューアルしたホテルであり、上海初のブティックホテルとして営業している。このホテルはバトラー・サービスを提供しており、まるで自宅にいるかのように心からくつろぐことが出来る。
ホテルの正門を出て右に向かって一本目に交差しているのが、巨鹿路だ。この道は百歳の大古参で、675-681号にある劉吉生旧宅はL.ヒューデックの手によるもの。「愛神花園」とも呼ばれ、現在は上海市作家協会が使用している。また創作料理「蛍七人間」、日本料理「和美」上海料理「HOME’S私房菜」など上海の名店が揃っている。上海文学青年が必ずチェックするという渡口書店も静かに営業している。
すぐ傍にある百メートル余りの短い道路、進賢路は繁華街の中にある生活感豊かな「芸術の小路」だ。蘭心レストラン、春レストランなど上海の家庭料理が何軒か密集しており、どこも小さい店だが上海人のおふくろの味に惹かれて根強いファンが通う。また、「ロモグラフイ」という店はLOMOカメラを愛する人々のオアシスになっている。