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観光地レポート |
永安百貨店 |
更新日:2015年05月04日 |
百年前の上海は「アドベンチャーの楽園」と呼ばれ、毎日何かしらのミラクルが起こっていた。最もにぎやかなエリアだった南京路に新新・先施・大新・永安四大デパートが誕生したことも、非常に珍奇なことだといえる。永安百貨店は南京東路635号にあり、6階建てです。一列に繋がった各階のベランダ、屋上にある3層の塔楼など非常にすばらしいです。 |
午後2時頃か夕方に、南京東路と湖北路の交差点周りにいれば、優雅なサックスの調べが永安百貨店2階のバルコニーから流れてくる。このイベントは南京東路歩行街の知る人ぞ知るプチサプライズだ。サックス奏者はいつも紳士風の中年男性で、燕尾服に礼帽をかぶり、演目は全てオールドジャズ。その姿は真剣そのもので、眼下の聴衆のことなど気にしていないよう。この気高さこそかつての南京路が持っていた魅力であり、今彼がいる、永安百貨店がその代表でもあった。
【歴史】
百年前の上海は「アドベンチャーの楽園」と呼ばれ、毎日何かしらのミラクルが起こっていた。最もにぎやかなエリアだった南京路に新新・先施・大新・永安四大デパートが誕生したことも、非常に珍奇なことだといえる。
永安公司の発展史は高齢の上海人なら皆していると言えるほど当時は有名なエピソードだ。永安公司創始者の名は郭という。郭家はオーストラリア華僑で、1916年に上海にやって来た。社会的地位がたかった郭標・郭楽の兄弟は多くの政治家たちとも交流し孫文とも親しかったという。興邦救国思想の影響を受け、兄弟は上海に定住し、民族の事業を発展させる決意を固めた。
永安公司の建設予定地の決定には兄弟は頭を悩ませたが、ビジネスマンのとしての経験から、流動量の多い場所が客商売の商売を決めるということをしていた。そこで交通量調査を行い、そのデータを基に南京路と湖北路の西南角、先施公司の真正面にデパート建立を決めた。
土地使用権を有するユダヤ商人Hardoonの賃貸条件は「賃貸契約期間は30年、契約期間満了後はその土地及び建物は全てHardoonの所有に帰す」というハードなものだった。だが、その Hardoonの思惑とは裏腹に、30年後に郭兄弟は建物も土地使用権も全て買い取ることに成功している。ともあれ契約を交わした郭兄弟は1918年9月5日無事にデパートをオープンさせた。オープン当日、売り場面積600平方メートルにもなる巨大デパートに市民が押し寄せ、一日芋の子を洗う状態が続いたという。
新たに参入した永安公司は上海屈指の高級デパートだった。エレガント・尊厳・スタイリッシュの象徴になった永安は上海初の試みを次々と導入する。床まである大型ショーウィンドウ、売り場でのファッションショー、商品券の発行や賞品配布など、新たな販売戦略が当たり、永安は1920-30年代は平均年間売り上げが100万円(旧幣)を超え、最盛時には200万元(旧幣)に達した。
1933年、永安百貨店は更に奮闘し、デパートの東隣に22階建の三角形のアネックスを設立。永安公司と名づけられたこの高層ビルには高速エレベーターや冷暖房空調などの最先端の設備が導入された。更に、2基の空中通路を本館との連絡通路として架けて往来を便利にした。
「郭四女史」
英語名Daisy、中国名郭婉蛍、第四子なので、郭四小姉と呼ばれ、近代上海の有名令嬢の一人に列せられている。作家の陳丹燕が著書「上海の金枝玉葉」で彼女の数奇な一生を詳しく記している。広東省中山県に生まれ、オーストラリア国籍をもつ華僑が創立した南京路にある先施・永安・新新・大新の有名四大デパートのうち、先施公司の創始者馬応彪氏は郭四女史の外祖父にあたり、永安公司創始者と二代目継承者はそれぞれ郭四女史の父親と叔父兄弟である。
【建物】
南京東路歩行街を歩いていても、永安百貨店は特に目立つ建物ではない。6階建ては高層ビルとは言えず、折衷主義のデザインも歴史的建造物の多い南京路では当たり前にすら見える。だが、他には無い、誇るべきものもちゃんとある。例えば、一列に繋がった各階のベランダ、屋上にある3層の塔楼などだ。この塔楼は離れてみないと良く分からない上に、純粋に西洋風の塔なのに「綺雲閣」という、とても美しく、まるで一艘の巨大な航空母艦のようだ。屋上の塔が展望台で、弓なりになった正面玄関の両端に立つイオニア式の双柱が乗船用のはしごに見える。
この建物はイギリスのパーマー&ターナー事務所が設計し、中国の馥記営造廠が施工した。パーマー&ターナー事務所は当時の上海で最大の建築設計会社であり、馥記営造廠は中華民国非常に有名な建築会社だ。国際飯店と南京にある中山陵(孫文のお墓)もこの会社が施工している。
デパートの隣には、上海人が「七重天」と呼ぶ永安公司のアネックスがある。アネックスは2階建ての高層ビルで、1934年に国際飯店が落成するまでは七重天が上海最高の建造物として君臨していた。
この建物のもう一つの栄誉は上海テレビの誕生地ということだ。1958年、外国でテレビが発明せれてから13年後、上海にも自分たちのテレビ局が誕生した。そのテレビ局こそがアネックスの12階に設けられたのだ。高度百メートルを誇るアネックスからかけられたアンテナは半径30キロメートルをカバーした。1950年代から90年代までに3局のテレビ局が七重天から映像を発信していた。
【周辺紹介】
永安デパートはその容姿の美しさで人目を引くがその横にひっそりと隠れた「永安路」の存在もしていてほしい。永安路は実際には金華路と言い、この道には長さ16メートルと13メートルのチンチン電車が展示されている。この電車、実はカフェになっており、社内で美しいコーヒーが飲める。電車の傍には上海フィルムスタジオのデザイナーが特別に作らせた12本の旧式電柱までディスプレイする凝りようが心憎い。
永安デパートが上海に進出して1992年、その周辺にも老舗が多い。斜め前にあるのがかの有名な「沈大成」、あんこ入りの棒餅(豆沙条年?)やミンチ入りの月餅(鮮肉月餅)などは根強い人気を誇る。広西北路の方向に歩けば広東料理の「新雅粤菜館」。水晶蝦仁なおの定番メニューに絶対の自信を持つ。山西南路方向には硯や墨など書道用品の専門店「朶雲軒」があり、ここも老舗の名店で、手軽な物から高級品まで揃う。そのほかにも、刃物の専門店「張小泉剪刀」や中国南方の特産物を扱う「邵万生南貨店」泰康食品店などにも是非立ち寄ってみよう。
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