観光地レポート |
三江の鼓楼と程陽風雨橋 |
更新日:2019年05月24日 |
中国には、山深き里に自給自足で自然と共に日々の暮らしを営む民は、今もなお多く存在します。その様な暮しの中に、我々現代人が忘れてきた何かを見つけられるのか?ご一緒いたしましょう。 |
ニ-ハオ!チャイナエイトへようこそ~!
雲を呼び・雨を降らす「龍」が守る地へ
自然と共に在る暮しとは?
さて、そこはどのような地でありましょうか?
撮影日:2013年4月7日
撮影場所:広西省柳州市 龍の守る里(三江県程陽風雨橋のトン寨)
先日、以前よりずっ-とずっ-と楽しみに待ち望んでいた地へ、願いが叶い行くことが出来ました。そこは、桂林より片道3時間少々、往復6時間以上も車でかかります。
朝、帰りの時間を考え早目に8時20分頃発ち、爽やかな空気の残る中、車は軽快に走って行きます。と、なんとも言えない好いに薫りに車の中は満たされました。外に目を遣ると、両側に果樹園が広がっています。満開の花を咲き誇るオレンヂの樹々が周辺へ強く芳香を放っています。驚くことに、花を着けた樹々と共に実をたわわにつけた樹々も混在して見られます。中国南部では果実が実るのと同時季に花を咲かせることは珍しくないそうです。私も、余り目にしたことは無いんですけど。日本では考えられないでしょう?
車は、漸く一つ目の目的地へ着きました。時刻11時30分。ここは、三江トン族自治県に在る、27階建の偉容を誇る有名な「三江鼓楼」です。逸る気持ちを押え、予約していた昼食を先に、その後にゆっくりと見学することにし、すぐ近くに建つ「三江風雨橋国際大酒店」へ入りました。三江のベーコンは評判が高く、これも今日の楽しみの一つです。中国にはベーコンがメインのとても美味しい料理があります。皆で賑やかにおしゃべりをし食事を堪能しました。大満足です。少し休憩をとり、いよいよ本日の(楽しみ)へ向かいます。
この「鼓楼」は三江県の数ある中でも、最高の高さと最大規模を誇り、三江県のシンボル的存在です。高さ47メートル27階建の堂々たる立ち姿に、暫く見惚れます。屋根は薄く小さな瓦を葺き、廂の先には「龍」が乗っています。
農耕民族にとり、【雲を呼び・雨を降らす】「水神」である「龍」は最も尊ばれる存在です。中には太い柱が数本ドーンと立ち、27層もの重量を支えています。部材と部材を伝統の技を用いて組み上げており、釘の類は一切使われていないとのことです。狭く急な階段を恐々最上階へ上がると、一気に外の世界が展ります。目の下には、ゆったりと煌きつつ流れる「浔江」を望み、三江の町並が広く一望できます。その遥か遠くに山並がかすんでいます。爽快な気持ちのままに地面に降り立ち、「鼓楼」を仰ぎ見ると、胸に迫るものを感じます。トン族伝統の知恵と技のなせるものでしょうか……
「鼓楼」の前には大きな広場が設けられ、折々の行事の際に人々は集います。「春節」には獅子舞・龍の舞などが広場の真中で演じられ、広場を囲む大勢の人垣からは賑やかな歓声が湧き起こります。又、「端午節(5月)」・「中秋節(9月)」などにも、伝統衣装に正装した老若男女の大勢の人々が集い、踊りと歌で華やか場となります。
「鼓楼」はトン族を象徴するものであり、村ごとに存在します。本来、「鼓楼」は山や野良仕事へ出ている村人を、火急の際に呼び集める重要な役目を持っています。大太鼓を最上階へ配し、非常時(火事、水害、地震、山崩れ、事件)に打ち鳴らして知らせます。平素は専ら、隠退した「古老」の雑談や賭け事を楽しむ溜まり場となっています。
普段は民族衣装の貸衣装屋さんが店を広げており、観光客の多くは銀の頭飾りを被り、トン族伝統の藍染スカートなどを身に着け記念の写真を取り合ったりしています。
次に、国の重点文物の指定の「モノ」が待つ場所、三江の町から北へ19km程先へ向かいました。トン族の人々は、殆ど村を川沿いの地に設けます。又、必ず村の下流側に、村の玄関口として、屋根を載せた見事な木造り橋を架けます。この橋には、「村の富が流れ出ないように」との願いもあります。雨の多いこの地方では、木造の橋は腐り易く、トン族の人々は古くから屋根を持つ橋を造り続けてきました。屋根は三層・四層もの廂を持つ、まるで城塞のような堂々たる造りです。屋根のある橋は日本、ヨーロッパでも見られますが、それらと比べ、格段に立派で風格を具えています。
橋はそれぞれの村、自慢の存在です。それゆえ、大工の指揮の下に村人は伝統の技を競います。完成した橋では「風の日」・「雨の日」没問題(問題無し)とオシャベリを楽しめます。これらの橋は「風雨橋」と呼ばれ親しまれています。県内には数十に上る「風雨橋」があり、中でも規模が大きく精巧な造りで華麗な姿を見せるのが、この「程陽風雨橋」との定評です。
橋は76メートル、瓦と橋脚を除くと全て杉の木材のみで作られています。春、橋の上に立てば、遠く近くに水車の回るのを眺められ、その間を埋め尽くすように菜の花のジュウタンが広がり、川岸は緑の帯のように茶畑が連っています。夏、多くの村人が川の上を吹く夜風に涼を求めて集り、子供たちは走り回って戯れと、「風雨橋」は村の社交場となります。
観光客が沢山来るようになり、村人はトン族伝統の刺繍を施した小物類や藍染衣装を橋の欄干に沿って長く長−く設えられた腰掛けに展げ、観光客の気を誘います。お客も値段の駆引きを楽しみつつ「お土産」に買い求めています。
「馬安鼓楼」と呼ばれるのもが村には建っています。6階建の「馬安鼓楼」の前も広場になっています。
のんびりと村の中を散策すると、放し飼いの鶏、家鴨、ガチョウなどの散歩に出会います。我々が通り掛けっても、足元の餌を夢中になって啄ばみ、我々の存在は全く眼中にありません。とても長閑な雰囲気です。
最近は、村に宿泊するお客も増えており、今や「雨後の竹の子」のように民宿やカフェを始める家々が出てきています。
ここでは、毎日午後3時より30分間の少数民族・トン族の歌と踊りが被露されます。
竹で手作りされた笛「芦笙」を吹き鳴らし、それに合わせて舞踊ります。踊りは村の風俗、習慣を表しています。
踊り手の女性が小さいな杯を捧げ、お客さんの輪に入り、お酒を勧め回ります。これには「ようこそいらっしゃいました」との歓迎の意味があります。お酒の弱い人も勧められたりもします。
お酒は米で醸され村の各家々で手作りされています。少し甘く、口当たりが好く、飲み過ぎるそうそうです。それでも、頭に来たり二日酔いになったりは無いそうです。本当かナ−?
ドン族はお酒好きな人が多く、お祭りや祝儀、不祝儀の席では大量のお酒が酌み交わされます。お酒を振る舞われた観客は、さらに気分好くなり、囃子声を発したりして、一段と盛り上がります。
最後は、女性の踊り手達がお客さんの手を取り、踊りの輪の中へ引き入れます。お酒が入り気分よくなった人達も、次々に飛び入りし大きな輪となり、最高潮に達し拍手と歓声の内に終演を迎えます。
三江の見所2ヶ所を楽しむには、朝から夜まで要しますが、本当に満足した一日でした。
皆様がこのコースへ来られる際には、是非日程にゆとりを持たせ、「程陽風雨橋」村に宿泊されると、もっともっとトン族の生の生活体験が味え、思い出深い旅になるのではないでしょうか?
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