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小紅楼
更新日:2015年02月10日

1920年代から中国で流行歌が普及し発展してきた全軌跡を見届けていた小紅楼は徐匯区衡山路811号にあり、今でもよく知られている「夜上海」や「夜来香」の2曲は1930年代の上海の情景を歌っている。後に中華人民共和国の国歌に選定された「義勇軍行進曲」もこの頃に小紅楼で誕生したのである。

【歴史】
エジソンの蓄音機発明から20年後、フランス人のE・ルービンセンが上海にこの蓄音機を持ち込み、大衆に「洋人大笑」というレコードを一回10文で聴かせた。1908年、フランスのパテ兄弟社が上海の南洋橋(現・西蔵南路)で東方百代唱片公司を立ち上げた。中国初の海外レコード製造会社である。時を告げる雄鶏を商標に、公司の経営はルービンセンに任された。
1921年同社は徐家匯路1434号(現・徐匯区衡山路811号)の土地を購入し、パテ・マルコにを設立。赤いレンガで建てられたこの建物から、同社は「小紅楼」と親しげに呼ばれるようになり、建物自体はれこーディングスタジオとして使用された。その後数十年間ここは中国最大にして最高のレコーディングスタジオだった。
百代公司設立当時、中国にはまだ流行歌というものが無く、百代が製作したレコードは基本的に西洋音楽か中国の戯曲ばかりだった。1920年代末になり、「毛毛雨」という恋愛小唄が巷でよく聴かれるようになった。それは上海人ないし中国人がそれまで聞いたことも無かった音楽だった。このレコードを製造し名実都と共に流行歌曲のレコード製造の先駆けの存在になったのが、百代である。
1930年代、百代公司はある宜伝文言を作った。「当代の名曲は全て百代が、映画界のスターは全てわが社に」この強気なコピーは虚勢ではない。当時の歌謡界の頂点にたっていた周旋、白虹、李香蘭らはみな百代公司と契約していており、胡蝶、阮玲玉ら映画界のスターも百代公司と契約している歌手だったのだ。当時の上海は彼女たちの歌声で満ちていた。
今でもよく知られている「夜上海」や「夜来香」の2曲は1930年代の上海の情景を歌っている。後に中華人民共和国の国歌に選定された「義勇軍行進曲」もこの頃に小紅楼で誕生したのである。
1980-1990年代、まだまだ多くのミュージシャンが小紅楼でのレコーディングを希望していた。2002年に徐家匯緑地の二期工事が始まり、小紅楼のレコード会社は移転。この場所にはレコード会社が入っていない建物ー小紅楼だけが残った。
【建物】
小紅楼はレコード会社のレコーディングスタジオだったといわれているが、その姿はまるで郊外に佇む別荘のようだ。精巧で美しく、タヌーンティーや日光浴がよく似合う。全体の風格は古典的な非対称の擬似三階建で、外壁は赤レンガと白いコンクリートで装飾している。茶褐色の屋根は二段に分かれており、上部の傾斜は険しく下部は緩やかだ。
ひさしは深めで「牛腿」という組み物部材で支えており、その内側は紅色の彫刻模様で装飾されていて、とても調和が取れている。ファサードで最も面白いのが貝の形のようなポーチの屋根。屋根の上から二階を突き抜けて長細いガラス窓が上へと伸びており格子で飾られた窓の奥に階段が見える。
二階の逆U字型の窓、「老虎窓」と天窓の間にセメントで作られた彫刻がある。百合の花の形をしていて、花弁が天窓に向かって開いている。この飾りが本来繋がっているはずのひさしを切断したことで、地味になりがちなデザインを一瞬にして華やかに変貌させた。明るい印象の外観に比べ、中は少し厳粛なムードが漂い、長方形をモチーフにしたデザインだ。
すばらしいのは北側にある階段。施された彫刻はとても精巧で、中央を四角く吹き抜けにした廻り階段の手すり子は「望柱」欄干は細長い花瓶のようになっており、下から見上げるとまるで中国の伝統的な「藻井」と呼ばれる天井装飾のようで見惚れてしまう。
現在、小紅楼は音楽に携わってはいない。だが、一階の壁に「レコーディング時の注意点」と書かれた額縁がかかっている。落款には1983年とあるので、1921年から閉鎖される1983年まで小紅老が忠実にレコーディングスタジオとしての使命を果たしていたことがうかがえる。
【周辺紹介】
現在、この建物はRestaurante Martin というスペイン料理のレストランになっており、ハモン・イベリコやシーフード・パエージャが評判だ。公園を出れば衡山路。この通りは街路樹のプラタナスがよく育っており、緑の長い長い廊下のよう。
1922年に植えられたプラタナスの木陰にはその頃に誕生した歴史的建造物も多く現存している。ここは上海市内で最も一戸建て家屋が多く、その面積が最も広いエリアでもあり「衡山路ー復興路歴史文化風貌区」に指定されている。西湖公寓、衡山公寓など多くの上海を代表するクラシックなアパートもこの通りに面しでいる。
1933年建の凱文公寓は衡山路525号にあるアールデコ様式の建物で、一人のロシアンプリンセンスの上海滞在用に建てられたといわれている。2009年春に「@ギャラリー・スイーッ」というブティックホテルにリノベーションされた。客室は全部で39室あり、当時の西洋電話やソファーなどのアンティークが取り入れられた部屋には1930年代のオールド上海ムールが満点だ。
衡山路はバー・ストリートとも言われており、各国スタイルのバーが点在している。オープンカフェが大好きな欧米人が特に多いのはこのエリアのムードが彼らの故郷に似ているからなのかもしれない。
衡山路周辺の余慶路、康平路、宛平路、武康路はムードや景色が調和して、上海の景観保存地域として、散策に最適な場所だ。
 
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