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貴州省で陽明学を完成させた王陽明
更新日:2012年11月12日

 王陽明(おうようめい)(1472年-1529年)中国の明代の儒学者、思想家。朱子学を批判的に継承し、読書のみによって理に到達することはできないとして、仕事や日常生活の中での実践を通して心に理をもとめる実践儒学陽明学を起こした。


  〔文〕貴州省観光親善大使 吉川団十郎

 王陽明は、中国の思想家で貴州省修文県で花開かせた儒教・『陽明学(ようめいがく)』の創始者です。たぶん日本人はこの名前を聞いても殆んどの人は「聞いた事ないです」と答えるでしょう。ところが江戸時代末期の武士や支配階級で知らない人はいなかったはずです。と言うのは江戸時代の道徳教本は中国から伝わった儒教の論語、『師のたまわく』のようなものしか無かったからです。そんな訳で江戸時代から明治時代初期にかけての知識人なら誰もが知っているのが、王陽明が書き残した儒教の一つである『陽明学』なのです。その王陽明の教えを学び共鳴して、日本の国を変えていった人達がいます。たとえば吉田松陰、そして松陰の教えを受けた勤皇の志士達、そして西郷隆盛、三菱創設者の岩崎弥太郎等々。

 儒教と言うのは今から2500年以上も前の孔子に始まったと言われています。その儒教の教えを説いた孔子が亡くなって約200年後に孟子(もうし)と荀子(じゅんし)が台頭して来るのですがこのあたりから儒教が大きく枝分かれして行く事になるのです。まず孟子が性善説を唱えると逆に荀子が性悪説を唱えたりと・・・。やがて西暦1150年頃になると朱熹(しゅき)と言う思想家が現れて来て朱子学(しゅしがく)と言うのを唱えます。朱子学と言うのは儒教と仏教と道教をミックスして考え出されたものです。

 さて、それから更に約350年後の西暦1500年頃になって王陽明が出て来ます。彼は『陽明学』を唱え、それまで主流であった朱子学の教え「行動は万物の理論を深めてから行なうべし」の部分に異を唱え「人は読書だけでは理性には到達はできない。仕事や日常の生活の中での実践を通して心を鍛えるべき」と・・・。もっと分かりやすく言うと、それまでの朱子学は「理論一辺倒で机上の学問だったのに対して、陽明学は、「何事も行動してみる事。経験から学べ」と言う教えです。このように王陽明は官僚の学問を庶民の学問に押し広げて行った功労者なのです。

 この王陽明は中国浙江省の生まれで頭がズバ抜けて良く、28歳の時に科挙に合格しました。『科挙』というのは日本で言う官僚試験です。ところがその科挙というのは世界最大の難関と言われるくらい難しいのです。それも試験は中国全土の秀才が集まって行なわれ、なんと3年に1回しかやらないというのですからその難しさが分かるはずです。

 王陽明は科挙を卒業すると、時の皇帝「武宗」に使えました。でもある日、宦官の独断的な政策に反対して皇帝に上訴したのです。ところが逆に恨みをかってしまい、中国貴州省の田舎町『龍場鎮(現在の修文県)』に左遷させられてしまいました。しかしそれが陽明にとっては良かったと言うか、この貴州省で彼の哲学『陽明学』が完成したという訳です。この龍場鎮での悟りを『龍場の大悟』と言います。日本の時代で言うと室町時代の末期の頃です。

 そして、この陽明学はやがて海を渡り日本にも伝わりました。その結果、日本ではどのような受け入れられ方をしたのかというと、既に武士の間では朱子学が教育の基本となっていたために幕府の老中松平定信は「幕府教育機関では朱子学以外の講義を禁じる」と言い、『異学の禁止令』というお触れを出すのです。ところがそうなると逆に反体制的な人々に異学と言われた陽明学が支持されるようになるのです。そんな訳で冒頭にも言ったようにこの陽明学を勉強した人達というのが幕府に対して抵抗した大塩平八郎・西郷隆盛・岩崎弥太郎・吉田松陰・高杉晋作などの面々です。

 やがて明治政府が誕生すると教育勅語などに儒教の忠孝思想が取り入れられました。しかし第2次世界大戦後になると、儒教は支配者に都合の良い思想として批判を受け影響力は弱まる事になるのです。とはいうものの儒教の基本的精神は日本人の思想に深く根付いた存在となっています。例えば、日本人は仏教のオリジナルだと思っている葬儀・位牌・法事・祖先崇拝・先祖霊などは儒教から生まれたものなのです。つまり日本でもいつの間にか儒教と仏教が融合し、日本の特色ある仏教となっているのが現在です。

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